
法人格にはさまざまな形態がありますが、当面は会社法、特に株式会社に関する実務について書きます。
(1) 会社設立に専門家の知恵は不要の時代
株式会社設立については、定款の作成や発起人関係の書類(主に行政書士の領域)から設立登記申請(司法書士の独占領域)まで、専門士業や親会社法務部門の力が必要とされてきましたが、最近ではAIの発展や個人での起業促進で支援サイトが立ち上がるなど、独力で会社設立までは入力ベースで申請できるようになってきています。
その流れ自体は、専門士業にとってマイナス要因ですが、われわれの存在価値は、例外事項への的確で迅速な対応と安心なサービスの提供にありますので、脅威に感じる必要はないと考えています。いずれにしましても、それぞれの専門性を深堀り継続することで、誰にも負けない専門性をキープしていくことが一番重要だと思います。
(2) 会社を作ったのはいいけれど
株式会社ではいろいろやるべき規定があって、それを行わないと過料に処せられることがあります。この過料とはあやまち料という意味なので、刑事罰とは違うのですが、行政的な罰則という意味合いがあり、やはり好ましいことではありません。
たとえば、法定公告といって、会社が公告をする方法は登記事項で定款に記載されることがほとんどですが、通常は官報に掲載すると定款に規定する会社が多いです(大企業は別)
株式会社の法定公告の種類はそこそこ多いのですが、それをやらないと手続きが前に進めない公告と、そうでないものがあります。そうでないものの代表格は、決算公告。事業年度(決算制度)ごと、年に1回は必ず決算公告をしなければならず、やらなければ上記の過料に処せられるわけですが、この公告を丁寧にやっている会社がどれだけあるかというと、よくわかりませんが、ほとんどというには程遠い状態と思います。
(「2021年に官報に決算公告した株式会社は4万154社で、全株式会社のわずか1.5%にとどまることがわかった。」というネットニュースは検索できました。)
法律には、不実施は100万円以下の過料になっていますが、この適用例が過去にほとんどないため、放置されるケースも多いです。
(3) 株式会社としての必要経費
やはり会社にとってコスト意識は重要なので、たとえ義務を守らなくても影響が少ないものは見送りたい気持ちはわからないでもないですが、経営者の義務として、法遵守義務はあるわけで、思わぬところから発覚し、意外なところで信用が喪失するので、必要経費として年間予算に組み込んでください。
定款がその後の変化に併せて変更されていないとか、取締役会の開催や議事録の作成があまりできてなかったりというところがある場合は、今すぐ相談してください。
(4) まとめ
株式会社を作ったあとは、会社法上の義務を守れていない場合が部分的にあります。会社経営の信頼性向上のため、抜け漏れは極力直していきましょう。