
(1) 不正とは
不正とは、法令違反や規則違反等を隠蔽する行為を言います。
昨今は不正に対する見方は一層厳しくなり、その発覚により企業の存続ができなくなるケースも増えてきています。新聞やニュースをみても、不正の事例は枚挙に切りがありません。不正をすることで、会社や特定の個人が利益やサービスを得ることもできますし、会社やターゲットの個人に不測の損害を与えることもできます。また不正はその会社の内部者が行う場合もありますし、外部者の場合もあります。
(2) 不正発見の手段
不正はどうやって発見されるのでしょうか?
統計的には、半数近くの不正が「通報」により発見されます。その約半分が内部の従業員からの通報(いわゆる内部告発)で、残り半分が外部からの通報となります。
それ以外には、いわゆる内部監査での発見、管理者等によるチェックがあり、その3つで全体の70%になります(次いで書類審査、偶然と続きます)。
不正のデータには、公認不正検査士協会が隔年で発行する「職業上の不正に関する国民への報告書」がネット検索で容易に入手できますので確認ください。
内部監査での発見が2位となっていますが、実際の内部監査の仕事は、不正の発見が目的ではありません。不正防止の仕組みや体制が適切かどうかを見に行くのが基本なので、実際に不正発見が見つかることは滅多にありません。防止の仕組みに穴があり、その穴の修復を行うためのモニタリング中にたまたま見つかるということがほとんどです。
内部監査の結果、不正の有無を真っ先に気にしている経営者は多いですし、そのお気持ちもわかりますが、内部監査部門としては、不正防止のコントロールは適切かという視点でしっかり見てくださいとお願いをするスタンスが重要と考えています。
(3) 不正の発生するメカニズム
発生のメカニズムとしてよく言われるのが、不正のトライアングルです。
不正は、機会―動機―正当化の3要素に影響を受け、相互に関連することで不正が発生する、というものです。
① 機会
時系列として見れば、最初に不正を行う「機会」が存在します。
不正を防止する仕組みやルールの欠如がその代表例です。また、今ある地位を利用して、現在あるコントロールを無効にしてしまうことで発生する場合も含まれます。
内部監査において、一番しっかり見る必要があるところです。
② 動機
次に「動機」です。不正を行う動機が存在する、不正を行う圧力が存在することです。
本人の動機として主なものは、パワー(権限)を得たい、金銭欲や物欲を充たしたい という野望、肉体的・精神的ストレスからの解放・逃避などが考えられますし、また、外部の第三者からの圧力によることも動機に入ります。内部監査で動機を発見することは困難です。リスクが高い部門(購買部門や生産技術部門など)の監査時には、当事者周辺のインタビューで、急に羽振りが良くなった人の存在を確認して間接的に感触を得る場合があります。
③ 正当化
不正を正当化できる理由付けが存在することです。
企業文化や風土・環境そのものに問題がある場合が該当します。
たとえば、自分の上司も同じことをやっているから自分がやっても構わないという
のが、正当化の代表例です。もちろん上下関係は関係はなく、経営幹部の背任行為なども影響を与える行為になります。
企業文化を監査していくスタンスは、経営に資する監査として、世界的に推奨されています。
(4) まとめ
不正事例を検証すると、不正の3要素が影響をし合って発生している点がよく見られます。会社経営者として気を付けなければいけないことは、まずは不正を正当化できるような理由付けは会社にないか、風とおしのよい企業風土になっているか、隠蔽体質はないかをしっかりチェックできる体制にすることです。そして、個別のルールに欠陥はないか、すなわち職務の分離はできているか、単独で金銭等の支出や払出しができない仕組みがあるか、ある行為の結果が、違うデータとの突合によって正当性を検証できる仕組みになっているか、などが整備・運用されているかになります。
個人の動機は、チェックできませんので、不正をやろうと思ってもやれない仕組みを作っていくことが何より重要です。
不正防止体制の構築は、公認内部監査人の得意とするところですので、自社の体制構築に有益かつ有効な助言・アドバイスができると考えています。