改正民法の可決・成立・公布
- 成年後見制度・遺言制度の大幅な見直し
- 遺言制度のデジタル化と利用しやすさの向上
以前の記事で、令和8年4月に閣議決定された民法改正案をご紹介しました。
その後、この法案は令和8年6月17日に国会で可決・成立し、6月24日に公布されました。
今回は、その後の動きを補足いたします。
- いつから施行されるのか
- 今後の考え方などを説明します。
今回成立したのは、
- 「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)
- 「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(令和8年法律第46号)
です。令和8年6月24日に公布されました。
成年後見制度については平成12年の制度創設以来最大規模ともいわれる改正となります。
改正法の施行はいつになるか
施行日は、今後政令で定められます。今回の改正は内容によって施行時期が分かれています。
成年後見制度関係
公布日から2年6か月以内
→ 遅くとも令和10年12月頃までに施行予定です。
遺言制度関係(押印廃止など)
公布日から1年以内
→ 遅くとも令和9年6月頃までに施行予定です。
保管証書遺言(デジタル遺言)
公布日から3年以内
→ 遅くとも令和11年6月頃までに施行予定です。
したがって現在は、後見・保佐・補助の3類型も、自筆証書遺言の押印要件も、すべて現行法のままです。
成年後見制度はどう変わるのか
「後見・保佐・補助」の3類型が一本化
現行制度では、
- 後見
- 保佐
- 補助
に分かれています。
改正後は後見・保佐制度が「補助制度」に一本化されます。
これまでのように判断能力だけで一律に分類するのではなく、
- 不動産売却
- 遺産分割
- 預貯金管理
など、必要な支援だけを選択できる制度になります。
本人の意思をより重視
今回の改正の大きな特徴は「本人の意思尊重」です。
補助開始の申立てについて、
- 本人の同意を原則必要とする
- 本人の意向把握を重視する
- 補助人にも意思尊重義務を課す
ことが明確にされています。
「終われない後見」から「終われる後見」へ
従来は、一度成年後見制度を利用すると、本人が亡くなるまで継続するケースがほとんどでした。
改正後は、
- 遺産分割が終わった
- 不動産売却が終わった
- 支援の必要がなくなった
などの場合には制度を終了できるようになります。
利用者や家族が長年感じていた大きな不満点の改善といえます。
任意後見制度も使いやすくなります
任意後見制度についても見直しが行われます。
特に注目されるのが、
予備的な任意後見受任者を定めやすくなる
複数の任意後見契約を活用しやすくなる
今回の改正では、「不開始の合意」が導入されます。
これは、将来に備えて複数の任意後見契約を締結する場合に、
「第一候補の受任者が対応できなくなるまでは、第二候補の契約は開始しない」
という内容を公正証書であらかじめ定められる仕組みです。
例えば、
- 長男を主たる任意後見受任者とする
- 長女を予備的な任意後見受任者とする
といった設計が可能になり、本人の希望に沿った後見体制を準備しやすくなります。
また、
- 任意後見と法定後見との連携強化
- 本人意向の尊重
- 解任や解除手続の柔軟化
なども盛り込まれています。
遺言制度はどう変わるのか
今回の改正では、遺言制度についても非常に大きな変更があります。
自筆証書遺言の押印が不要になる
もっとも利用者への影響が大きいのは、自筆証書遺言の押印要件の廃止 です。
これまで必須だった押印が不要になり、
- 財産目録の押印
- 訂正時の押印
- 秘密証書遺言の証人押印
も不要になります。
遺言の形式不備による無効リスクの減少が期待されています。
「保管証書遺言」という新制度が誕生
今回の改正で最も話題になっているのが、保管証書遺言 の創設です。
従来の
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
に加わる第四の遺言方式です。
遺言制度のデジタル化
保管証書遺言では、
- 遺言内容を電子記録化
- オンライン本人確認
- ビデオ通話による手続
- 法務局での保管
などが可能になります。
高齢者や遠方居住者にとって、遺言作成のハードルは大きく下がる可能性があります。
検認不要という大きなメリット
保管証書遺言は、現在の法務局保管の自筆証書遺言と同様に、 家庭裁判所での検認が不要になります。
相続開始後の手続が円滑になることが期待されています。
実務上のポイント
法律は改正されましたが、まだ施行されていないので、喫緊の課題がある場合、
たとえば
- いま認知症対策を考えている方
- 遺産分割を予定している方
- 任意後見契約を検討している方
- 遺言作成を考えている方
は、現行制度を前提に検討する必要があります。
今後は、制度改正により、
「本人の意思を尊重する」
「必要な範囲だけ支援する」
「デジタル技術を活用する」
という考え方が、成年後見制度や遺言制度の中心になっていくと思われます。
今後公表される施行日や運用ルールにも注目しながら、このブログでも引き続き情報をお伝えしていきたいと思います。